溶連菌感染症は、A群β溶血性連鎖球菌=溶連菌の感染によって起きる咽頭炎です。溶連菌に感染すると、感染後2~5日程度の潜伏期間の後、発熱や咽頭痛が発症します。主な初期症状は、発熱(38~39℃)の他、手足の赤い発疹、舌の表面の赤いぶつぶつ(=苺舌)などです。風邪のように咳や鼻水が出ないのが、この病気の特徴です。
扁桃腺が弱い方が感染しやすい病気です。また、6~15歳の児童に多く見られますが、最近では成人でも感染が見られます。家族内での感染率は20〜60%と高いので、子どもが溶連菌感染症と診断された場合には、マスクを着用して飛沫を防ぎ、手洗い、うがいを徹底することが大切です。溶連菌の感染は、咽頭、中耳、副鼻腔、肺、皮膚、皮下組織、心臓弁、血流など様々な部位に生じます。
大人が感染すると咽頭痛に加え初期症状として頭痛が見られます。喉の痛みや関節痛、倦怠感などを感じ、インフルエンザ検査を受けても陰性と出るため、ただの風邪と判断してしまう場合があります。溶連菌が活発に活動するのは、11月から4月で、特に11月~2月の冬季はインフルエンザとの判別が難しい季節です。感染経路は、感染者のくしゃみや咳で飛び散った菌を吸い込んでしまう飛沫感染、タオルや食器などを通して感染する接触感染の2通りです。
溶連球菌咽頭炎は通常5歳から15歳の小児に起こり、3歳未満での発症はまれです。症状は突然喉の痛みが発症し、悪寒、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、全身倦怠感が見られます。喉が真っ赤になり、扁桃の腫れ、膿の斑点、首のリンパ節に腫れと圧痛が見られます。
喉の痛みを訴える患者で、咳や目の充血、声がれ、下痢、鼻づまりが見られる場合には連鎖球菌ではなくウイルスの感染が原因と考えられます。感染部位ごとの症状は、皮膚では感染した部位が赤くなり皮下の組織が腫れ、痛みを伴う蜂窩織炎(ほうかしきえん)やかさぶたと黄色い痂皮を伴うただれができる膿痂疹(のうかしん)が見られます。筋肉を覆う結合組織(筋膜)が感染すると壊死性筋膜炎が見られ、急な悪寒や発熱、重度の痛みと圧痛が感染部位に見られます。また、猩紅熱は今日ではまれですが、主に小児に発生し連鎖球菌咽頭炎後に起こりますが、連鎖球菌による皮膚感染症後に起こることもあります。学校や保育所など人同士で濃厚な接触がある環境で集団感染が起こります。
溶連菌感染症の治療には、ペニシリン系の抗生物質の経口投与を行います。重篤な感染症に対しては静脈内投与も行います。
発熱、頭痛、喉の痛みには、痛みと発熱を軽減するアセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの解熱鎮痛薬を投与します。しかし、小児ではライ症候群のリスクが高くなるため、アスピリンは投与すべきではありません。また、きちんと薬を服用しているにも関わらず、2~3日経っても熱が下がらない場合は、薬の効きにくい溶連菌に感染しているか、他の疾病を合併している可能性がありますので、早めに再受診することが大切です。
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