認知症には、根本的な治療が難しい認知症と治療可能な認知症があります。種類別にお話ししていきます。
■アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症ですが、完全に治す治療法はまだないと言われています。そのため、治療目標としては「できるだけ症状を軽くし、進行速度を遅らせる」ことです。前回お話しした、アルツハイマー型認知症の中核症状に対しては、改善効果のあるお薬もあります。よく聞く塩酸ドネペジル等はこれに当てはまります。しかし、これらの薬剤の効果は一時的で、認知症の進行を完全に抑えるものではありません。
■血管性認知症
血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しませんが、血管性認知症では、脳梗塞や脳出血などの脳血管の病気で脳が損傷されています。そのため、脳血管障害の原因となる、高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈などの病気をきちんとコントロールし、再発を防ぐ治療をすることが大切です。
■レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では、根治治療は今のところありません。現状では、症状に対する薬を使用していきます。精神症状がある場合は、抗精神薬によるコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善を目指します。自律神経障害に対しては血圧コントロールなどがあります。レビー小体型認知症の患者さんでは、抗精神薬への反応が過敏になりやすいので、薬の調整が難しく、時間をかけて様子をみながら薬の内容を検討する必要があります。
■前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症に対して、症状を改善したり、進行を遅らせる有効な治療方法は今のところありません。抗精神病薬など使用し、対症療法が主に行われています。
■行動・心理症状(BPSD)に対して
BPSDでは、適切なケアや環境調整、リハビリテーション等の非薬物療法が優先されます。その人らしさを尊重し、認知症の人の立場に立って理解しようと努めることが大切です。得意なことや保たれている機能をうまく使うことが重要となります。環境調整としては、デイサービス等の介護保険サービスの利用を検討し、認知症の人が安心安全に暮らせるような環境作りをしていく事が大切です。リハビリテーションとしては、ウォーキングや体操などの運動療法、リアリティ・オリエンテーション(常に問いかけを行い、場所・時間・状況・人物などの見当識を維持する)、簡単な楽器演奏などの音楽療法、過去を回想することも有効とされています。
■認知症の予防
中年期・老年期の運動習慣や定期的な身体活動、余暇活動が、認知症の発症率を低下させると言われています。また、すでに発症した認知症患者の認知機能を改善する効果もあるようです。その他に、聴力低下予防、生活習慣病の予防、抑うつ予防とコントロール、喫煙しないこと、社会的孤立を避けることなどにより、認知症の一部は予防できる可能性があるといわれています。適度な運動やバランスの良い食事、夜間の良好な睡眠、余暇活動を楽しむことを生活習慣にとりいれる事で認知症の発症を予防する事ができます。生活習慣病をもっている方はその治療も非常に大切です。
次回は認知症の方への接し方についてお話ししていきます。
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