解離性同一性障害(DID)とは?
- NS若林
- 7月18日
- 読了時間: 2分
更新日:8月28日
解離性同一性障害(以下DID)は、かつて「多重人格障害」と呼ばれていた精神疾患です。一人の心の中に、2つ以上の異なる人格(アイデンティティ)が交代で現れる状態を特徴とし、それぞれが異なる名前、性格、記憶を持っていることもあります。
●症状
・人格の交代:主人格(普段の自分)と副人格が交代して現れることがあります。2〜10程度が典型的ですが、100以上という例も報告されています
・記憶の抜け落ち(健忘):人格が交代している間の行動や会話を覚えていないことが頻繁に起こります
・離人感・現実感の喪失:自分自身や周りの風景が非現実に感じられることがあります
・フラッシュバックや体外離脱:過去の辛い体験が突然蘇る、あるいは自分が自分の体を離れて見ているような感覚に陥ることもあります
●原因
幼少期に受けた強いストレスやトラウマ体験です。身体的・性的虐待やネグレクトなどが背景にある場合が多く、脳と心がその苦しみを切り離す防衛反応を起こすと考えられています。
●診断
精神科医や臨床心理士による面接と検査が基本です。DSM‑5(米国精神医学会の診断基準)では、次のような要件があります。
・2つ以上の人格状態(アイデンティティ)が反復的に現れる
・重要な記憶の空白があり、薬や他の病気で説明できない
加えて、MRIや脳波検査で身体的原因の排除なども行われることがあります。
●治療
・心理療法(長期)
信頼関係を築きながら、人格間の断絶を統合へと導いていきます 。
EMDR(眼球運動によるトラウマ処理法)やCBT、DBTなどが用いられることもあります 。
・環境調整
ストレス要因がある生活環境から距離を置くことや、安全な居場所を確保することで改善を助けます 。
・薬物療法(補助的)
DID自体に直接効く薬はありませんが、抑うつや不安の症状がある場合にそれらを和らげる薬が使われます 。
●接し方
否定せず、話を聞く姿勢を大切に、焦らず、じっくり継続できる環境を整えましょう。本人が安心できる空間と関係性を維持することが大切です 。
●最後に
解離性同一性障害は、幼少期の深い心の傷を背景に、自分を守るために心が分裂してしまった状態とも言えます。しかし、専門家のもとで治療に取り組み、安全な生活基盤が整えば、日常を取り戻し、人格の統合を目指すことは可能です。本人だけでなく、家族や友人、職場の理解と協力も回復の大きな支えになります。




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