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認知症の症状~BPSD(行動・心理症状)について~

更新日:8月28日

ひとくちに「認知症」といっても、みられる症状は人によって様々です。今回は認知症の症状、「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」のうち、「BPSD」について、対応方法も含めてお伝えしたいと思います。


●中核症状とは?

認知症になると必ず見られる症状を「中核症状」といいます。これは脳の障害によって直接引き起こされるもので、記憶障害(もの忘れ)、見当識障害(時間・場所・人物の混乱)、判断力・理解力の低下、実行機能障害、失語・失認・失行があります。


●BPSD(行動・心理症状)とは?

中核症状に加えて、多くの認知症の方にみられるのが「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)(行動・心理症状)」です。BPSDは、早期の関わりで予防・治療が可能な場合もあります。


1. 不安や抑うつ(うつ状態)

です。「自分には何も価値がない」「どうせ何をやっても意味がない」といった思考が強くなり、理由もなく落ち込んだり、涙を流したり、何もやる気が起きないといった症状がみられます。外との交流を避けて、引きこもる原因にもなります。

対応:不安や抑うつの症状は、本人の感じる「無力感」や「未来の不安」に起因することが多いです。過度に慰めようとするのではなく、本人のペースでゆっくりと進んでいけるサポートが大切です。


・共感的な態度を示す

本人が感じている感情に共感し、否定せず、感情を尊重して受け入れる姿勢を持つことが安心感を与えます。


・小さな成功体験を積ませる

本人がやり遂げられる小さなタスクを設定し、達成感を感じてもらうことが、少しずつ自信を取り戻す手助けになります。


・安心感を与える環境を作る

落ち着いた空間や、リラックスできる音楽など、周囲の環境が不安を軽減する場合があります。


・専門的なサポートの導入

必要に応じて、精神科医やカウンセラーのサポートを受けることが有効です。抗うつ薬や不安を軽減する薬が有効な場合もあります。


2. 幻覚・妄想

「財布が盗まれた」などの被害妄想や、見えないものが見える、聞こえない音が聞こえるといった感覚の歪みが生じます。現実と虚構を区別することができなくなり、幻覚や妄想にとらわれることで、恐怖や不安、攻撃的な行動を引き起こすこともあります。

対応:幻覚や妄想がある場合は、現実を強調しすぎず、本人の感じていることに寄り添い、安心感を提供することが重要です。


・現実を否定せずに共感する

幻覚や妄想が起きた際に、「そんなことはない」と否定すると、逆に混乱させてしまいます。むしろ、「そう感じるんですね」と共感し、気持ちを理解する姿勢を示しましょう。


・安心させる

妄想や幻覚が怖い場合、「大丈夫だよ」と穏やかな言葉で安心させることが有効です。


・現実をゆっくり説明する

妄想に対しては、否定ではなく、優しく現実を説明することが役立つことがあります。例えば「誰かが入ってきた」と言う場合、「この家には誰もいないよ」と静かに話してみてください。ただし、無理に説得しようとすると興奮を助長させてしまいます。


・環境を整える

不安を引き起こしやすい物や状況があれば、それを避けるようにします。例えば、テレビの映像や音が幻覚を引き起こすことがあるので、静かな環境を保つことが有効です。


3. 暴言・暴力

感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなったり、急に大声を出すこともあります。「自分はいつも理解されない」「自分が言っていることがわかってもらえない」と思うことが暴言・暴力につながることがあり、また、この行動によって無力感や不安を解消しようとすることもあります。

対応:どのような心情でそのような行動をしているのかを理解し、冷静で穏やかな対応をすることが大切です。


・冷静に対応する

感情的に反応せず冷静に対応することが必要です。逆に反応すると、状況が悪化することがあります。まずは落ち着いて、怒りを受け止める姿勢を見せましょう。


・感情を落ち着ける方法を提供する

深呼吸を促したり、「少し落ち着こう」と言葉をかけたり、リラックスできる空間を作ることで、感情の高ぶりを鎮める助けになります。


・問題の源を探る

暴言や暴力が何から起きているのかを理解することが重要です。混乱や恐れ、痛み、介護の不安などが背景にあることがあります。


・安心感を与える

「あなたは決して悪くない」「私はあなたを守る」といった言葉で、相手が信じられる存在だと感じてもらうことが重要です。感情を激化させることなく、安心感を与える言葉や行動を心掛けましょう。



4. 徘徊

「○○をしなければならない」など何か目的があって行動しているつもりでも、まわりから見ると理由もなく歩き回っているように見えることがあります(目的の錯覚)。また、自宅の中でも場所がわからなくなり、出口を探すような行動にでることがあります(方向感覚の喪失)。この行動の背後には、時間や空間の感覚の混乱が影響しています。

対応:リラックスできる方法を提供したり、徘徊を別の活動で代替できるようにして、無理なく対処しましょう。


・安全対策をする

徘徊が始まる前に家の中の危険を取り除いたり、戸締りをきちんとすることが重要です。可能ならば、徘徊を防ぐために閉じ込めることなく、安全に活動できる環境を整えることが必要です。


・動機や目的を見極める

徘徊の目的がある場合(例えば「外に出たい」と思っている場合)に、その目的を理解し、適切な形でサポートすることが重要です。たとえば、散歩に出かけることで目的を満たすことができるかもしれません。


・注意をそらす

気をそらして別の活動を提案してみることも有効です。例えば、「一緒にお茶を飲みましょう」と声をかけるなど、静かなアクティビティを提供することが効果的です。


・運動・活動の導入

徘徊がエネルギーの発散のために行われることもあるので、安全な範囲内で運動や体を使った活動を提供することも考えられます。


5. 介護拒否

入浴や食事など、日常生活の援助を拒否することもあります。これは、自己認識の喪失や、身体的・心理的な不安感から来ることが多いです。自分はまだできるという思いから、介護を受け入れたくないと感じたり、自立を維持したいという思いから、他者からの助けを拒否することがあります。

対応:背後にある自立心や不安を尊重しつつも少しずつ受け入れてもらえるように配慮することが必要です。


・小さな提案から始める

急に大きなサポートを提供せず、まずは少しずつ小さな手助けを提案します。たとえば、「手伝いが必要なら言ってね」と声をかけることで、本人が抵抗感を持たずに受け入れやすくなります。


・選択肢を提供する

介護を受ける側に選択肢を与えることで、自己決定感を尊重します。たとえば、食事を取る時間や食事の内容を選ばせるなど、できるだけ自主性を保つような方法を考えましょう。


・安心感を与える

介護を受けることに対して不安や恐れがある場合、それを和らげるために、どんなことが行われるのかを事前に説明することが安心につながります。


・優しく誘導する

食事や入浴の際に、本人が拒否しても強引にではなく、時間をおいて優しく誘導することが重要です。


●まとめ

認知症の中核症状とBPSDは、どちらもご本人やご家族の努力不足ではありません。脳の機能の変化により、どうしても起こってしまうことです。

まずは認知症とは何かを正しく理解し、本人の感じている「不安」や「困りごと」に寄り添うこと、ご家族とご本人だけで抱えるのではなく、医療や介護スタッフも共同して“安心”を得られることが大切だと思います。早めの相談が、その後の“安心”につながるため、医師、看護師、ヘルパー、ケアマネジャーなど、気になったときには相談しましょう。

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